BtoBマーケティングがうまくいっていない会社には、2つのパターンがあります。
ひとつは、まだ何も始めていない会社。もうひとつは、始めたものが止まっている会社です。数で言えば、後者のほうが多いと思います。
サイトはある。何年か前に作った。問い合わせフォームもある。メール配信の仕組みも導入した。ツールも契約している。それなのに、問い合わせは紹介と既存取引からしか来ない。自然検索からの流入はほぼゼロ。誰も触っていないので、誰も止まっていることに気づいていない。
私が引き継いだのは、この状態でした。サイトもツールも配信の仕組みも揃っていて、しかし数年間ほとんど手が入っておらず、自然検索からの流入が皆無に近いまま放置されていました。ターゲットを定めたプロモーションも行われていませんでした。
動かし直すためにやったことを、順番に説明します。
- 誰に届けるのかを言葉にする
- 限られたリソースを、どこに先に入れるかを決める
- 小さく始めて、指標で確かめる
- 社内に残して、自分で回せる状態にする
コンテンツマーケティングと外部販促を6年間統括してきた経験からお伝えします。
ステップ1|誰に届けるのかを、言葉にする
最初にやるのは、施策の検討ではありません。ターゲットの言語化です。
止まっている会社の共通点は、施策が存在しないことではなく、誰に向けた施策なのかが決まっていないことです。サイトはある。記事もいくつかある。しかし誰に読ませたいのかが決まっていないので、書かれている内容が当たり障りのない一般論になっている。だから検索でも引っかからないし、たどり着いた人も反応しない。
ここで言うターゲットは、「製造業の中小企業」といった業種と規模の話ではありません。どんな課題を抱えている人か、という話です。同じ業種でも、人手不足で困っている会社と、受注は取れているが利益が残らない会社では、響く言葉がまったく違います。
既存の取引先から逆算する
ゼロから想像で作る必要はありません。手がかりは自社の中にあります。
いまうまくいっている取引先を何社か思い浮かべて、なぜ自社を選んだのか、導入前に何に困っていたのか、社内で誰が決めたのかを整理します。可能なら直接聞いてください。営業担当の記憶よりも、本人の言葉のほうが正確です。
この作業をすると、たいてい想定とずれます。自社が強みだと思っていた点ではなく、まったく別の理由で選ばれていた、ということが普通に起きます。そのずれが、そのまま発信すべき内容になります。
「誰にでも」は「誰にも」届かない
対象を狭めることに抵抗を感じる方は多いと思います。間口を狭めると機会を逃す気がするからです。
ただ、対象を広く取ると、当たり障りのない一般論しか書けなくなります。読んだ相手に「これは自分のことだ」と思ってもらえなければ、そもそも反応が起きません。狭めることは、捨てることではなく、届く形にすることです。
ステップ2|どこに先にリソースを入れるかを決める
ターゲットが決まったら、次に決めるのは順番です。ここが、立ち上げ直しで最も判断を求められる場面でした。
私が引き継いだ時点で、選択肢は大きく2つありました。サイトを作り直すか、記事を書き始めるか。 担当は限られ、予算も限られています。両方を同時に進める余力はありません。
受け皿を先に用意する
結論として、サイトのリニューアルを先にしました。そのうえで、SEO記事の制作に入りました。
理由は単純です。記事を書いて検索から人が来るようになっても、たどり着いた先のサイトが何を提供しているか分からない状態だと、その人は帰ってしまいます。集客の前に、受け皿を用意する。 順番を逆にすると、せっかく来てもらった最初の数か月ぶんが無駄になります。
これはECの立ち上げでも同じ構造でした。広告を出す前に、商品ページと在庫が整っているか。順番を間違えると、費用だけが先に出ていきます。
何をどの段階に当てるか
受け皿が整ってから記事に入る、という順番が決まると、その先の施策の位置づけも決まります。
BtoBの相手は、いきなり問い合わせてはきません。課題を自覚し、解決策を調べ、候補を比較し、社内で合意を取る、という段階を踏みます。この各段階で必要としている情報がまったく違います。
課題を自覚したばかりの相手に必要なのは、その課題の構造を整理する情報です。自社の商品説明ではありません。一方、比較段階に入った相手には、他社との違いや導入事例、費用の目安が要ります。記事は前者、事例や資料は後者。展示会はその入口になりえますが、入口だけ作って次の受け皿がないと、名刺が溜まるだけで終わります。
施策を先に決めると、この紐づけが逆になります。「展示会に出ることが決まったので何か配る資料を作る」という進め方では、どの段階に効かせたいのかが曖昧なまま、費用だけが出ていきます。
ステップ3|小さく始めて、指標で確かめる
設計ができたら実行です。ここで重要なのは、小さく始めることと、何を見るかを先に決めることです。
反応が出るまでには時間がかかる
正直にお伝えすると、自然検索は短期で結果が出る施策ではありません。
受け皿を整え、記事を積み始めてから、流入が明確に動き出すまでには数か月かかりました。そこから主要な流入源と呼べる規模になるまでには、さらに1年以上を要しています。合計で2年近い時間軸です。
この時間感覚を、着手前に社内で共有しておくことが重要です。共有できていないと、半年で「効果がない」という判断が下り、ここまでの投資が全部無駄になります。逆に言えば、この時間を許容できるかどうかが、自然検索に取り組むかどうかの判断材料になります。
問い合わせ件数だけを見ない
立ち上げ期に問い合わせ件数だけを追いかけると、数字がほぼゼロのまま動かず、続ける判断ができません。
手前の指標を置いてください。流入数、検索での表示回数、どのページが読まれているか、資料請求やセミナー申込の数。これを並べると、どこまで進んでどこで止まっているかが見えます。流入は増えているが問い合わせに至っていないなら、直すのは記事ではなく受け皿のほうです。
私の場合も、着手して数か月の時点で問い合わせはほとんど動いていませんでしたが、流入と読まれ方の推移は明確に変わり始めていました。その手前の数字があったから、続ける判断ができました。
ステップ4|社内に残して、自分で回せる状態にする
最後が、仕組みを社内に残すことです。ここを軽視すると、立ち上げそのものが無駄になります。
外部に委託すれば、たしかに早く形になります。ただ、委託先が持っているのは制作能力であって、自社の顧客理解ではありません。委託を続けるかぎり、顧客理解は社外に蓄積され、社内には残りません。契約が切れた時点でゼロに戻ります。
任せる部分と、持つ部分を分ける
全部を内製にする必要はありません。分け方の基準は、顧客理解に関わるかどうかです。
誰に何を届けるかの判断、実際の反応をどう読むか。ここは社内が持つべきです。一方、記事の執筆、デザイン、広告の運用といった実行部分は、外部の力を借りても問題ありません。
説明させると、ノウハウが残る
担当者ひとりで動かしていると、その人の頭の中にすべてが入った状態になります。異動や退職で消えます。
部署内で勉強会を開いたとき、講師を全員に持ち回りでお願いしたことがあります。教える側に立つと、自分の業務を自分の言葉で説明せざるを得ません。結果として一人ひとりが業務を自分事として捉えるようになり、つくった資料はそのままナレッジとして残り、引き継ぎにも使えるものになりました。
人が育つ仕組みと、ノウハウが残る仕組みは、同じことの裏表です。外から答えを持ち込むより、中の人が動き出すほうが、結果は長続きします。
まとめ
BtoBマーケティングが止まっている原因は、たいてい施策の不足ではありません。誰に届けるのかが決まっていないこと、そして入れる順番が決まっていないことです。
誰に届けるのかを言葉にし、受け皿を先に整え、小さく始めて手前の指標で確かめ、社内に残す。この順番を守れば、担当者がひとりでも動き出します。ただし時間はかかります。その時間を見込んでおくこと自体が、取り組みの一部です。
逆に、順番を飛ばして施策から入ると、費用と時間を使ったうえで「BtoBマーケは効かない」という結論だけが社内に残ります。効かなかったのは施策ではなく、順番です。
いま自社がどの段階で止まっているのか、一度整理してみてください。整理してみて判断に迷う部分があれば、BtoBマーケティングの組織づくりのご支援としてご相談を承っています。ご相談は無料です。担当者をこれから決める、という段階でも構いません。