営業の目標が未達のとき、多くの組織で起きるのは「数字で詰める」ことです。なぜ足りないのか、いつまでに取り返すのか、毎週の会議で問い詰める。短期的には人が動きます。ただ、それが続く組織はほとんどありません。
私は広告媒体の営業を13年統括してきました。その中で、詰める管理がうまくいかなかった経験も、別のやり方で営業の動きが変わった経験もあります。この記事では、その両方をもとに、詰めずに目標に向かわせる管理の考え方を整理します。
結論:未達額を分解して見せ、どう動くかを問いかける
先に結論を書きます。詰めない目標管理の要点は、次の3つです。
- 未達額を、手を打てる単位まで分解して見せる
- 答えを渡さず、「ではどう動くか」を本人に問いかける
- 売上の手前で動く数字を、先行指標として見る
その前に、なぜ詰める管理が続かないのかから説明します。
詰める管理が、組織を止めるとき
私が見てきた中で最も苦しかったのは、予算が高すぎる年でした。
現実的に届かない水準の予算が置かれると、チームの中に諦めの空気が生まれます。どれだけ動いても届かないなら、動く意味が見えなくなるからです。そこに進捗の確認が重なると、会議は未達を報告する場になり、報告する側も聞く側も疲弊していきます。
その結果、未達のまま終わる年が続きました。詰めるほど人は動かなくなり、動かないから数字が出ない。数字が出ないから、さらに詰める。この循環に入ると、個人の努力では抜け出せません。
ここで気づいたのは、届かないと感じている目標は、行動を促すどころか止めてしまうということです。問題は営業担当者のやる気ではなく、目標がどう見えているかにありました。
未達額を、手を打てる単位まで分解する
では、どうすれば目標が「届くかもしれない」ものに見えるのか。私がやったのは、未達額の分解です。
チームが目標に届いていない状況で、まずメニューごとの予算と実績の差を並べて見せました。全体でいくら足りないか、ではありません。どのメニューで、いくらの巻き返しが必要なのか。そこまで分けて示しました。
全体の未達額は、大きすぎて手の打ちようがない数字に見えます。ところが、メニュー別に分けると、一つひとつは「この商材で、あといくら」という、具体的に考えられる大きさになります。同じ数字でも、分解した瞬間に、打ち手を考えられる対象に変わるのです。
答えではなく、問いを渡す
分解した数字を見せたあと、私は具体的な指示を出しませんでした。代わりに、「では、どう動くか」をメンバーに問いかけました。
返ってきたのは、どのクライアント、どの代理店で、どれだけの獲得を見込むのか、という具体的な計画でした。私が用意していたものより、ずっと具体的でした。現場の担当者は、自分の顧客の状況を誰よりもよく知っています。分解された数字という材料さえあれば、打ち手は本人の中から出てくるのです。
その後、変わったのはアタックの質でした。やみくもに件数を回るのではなく、どこで何を取りにいくかを決めてから動くようになりました。自分で立てた計画なので、指示されたものより動きに迷いがありません。
このやり方の要点は、数字で構造を示すのは管理者の仕事、そこからどう動くかを決めるのは本人の仕事と分けることです。構造を示さずに問いかけるだけでは、メンバーは何を考えればよいか分かりません。逆に、構造を示したうえで答えまで渡してしまうと、自分の計画ではなくなります。この考え方は、コーチングとコンサルティングの違いで書いた、答えを渡すことと問いを重ねることの組み合わせそのものです。
正直に書くと、予算には届かなかった
ここで、結果を正直に書いておきます。このやり方で実績は確実に伸びました。ただ、予算そのものには届いていません。
これは、分解と問いかけが万能ではないことを示しています。予算の水準そのものが現実から離れていれば、管理のやり方を変えても埋まらない差は残ります。先に書いた、高すぎる予算が組織を止めるという話とつながる部分です。
それでも、このやり方に意味があったと考えるのは、変わったのが一時的な件数ではなく、アタックの質だったからです。詰めて増やした件数は、詰めるのをやめれば戻ります。自分で考えて変えた動き方は、次の期にも残ります。
売上の手前で、商談数を見る
もうひとつ、進捗を見るうえで大事にしていたのが、売上以外の数字です。私が見ていたのは商談数でした。
売上は結果です。結果が出るのは受注してからなので、分かったときにはもう手遅れ、ということが起きます。一方で商談数は、日々の行動がそのまま表れる数字です。商談が増えていれば、売上は後からついてきます。商談が減っていれば、売上が落ちる前に手を打てます。
先行指標を持つと、会議の中身も変わります。売上の未達を責める会議ではなく、商談をどう増やすかを話す会議になる。問い詰める対象が結果から行動に移るので、詰める空気そのものが生まれにくくなります。
まとめ
詰める管理は、短期的には人を動かしても、続けるほど組織を止めます。特に、届かないと感じられている目標の下では、行動そのものが止まってしまいます。
未達額を手を打てる単位まで分解して見せ、どう動くかは本人に問いかける。そして売上の手前にある商談数を見て、結果ではなく行動を話題にする。これが、詰めずに目標に向かわせる管理の基本です。ただし、予算の置き方そのものが現実から離れている場合は、管理の工夫だけでは埋まらない差が残ることも覚えておいてください。
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