やるべきことは、だいたい分かっている。それでも決めきれない。社長からこの言葉を聞くことは少なくありません。そして多くの場合、ご本人はそれを自分の決断力の問題だと考えています。
ただ、決められない理由は一つではありません。私の経験では、大きく2つに分かれます。そして、どちらに当てはまるかによって、打つべき手がまったく違います。この記事では、その見分け方と、それぞれの抜け出し方を整理します。
結論:知見が足りないのか、判断の軸が定まらないのか
決められない理由の1つ目は、知見が足りないことです。判断するための情報や経験が手元になく、何を基準に選べばよいかが分からない状態です。
2つ目は、判断の軸が定まらないことです。情報はそろっていて、選択肢も見えている。それでも、何を優先すべきかが自分の中で決まっていないために、踏み切れない状態です。
前者には、外から知見を入れることが効きます。後者には、自分の中の考えを整理することが効きます。逆をやると、どちらもうまくいきません。知見が足りないのに考えを整理しても答えは出てこないし、軸が定まらないのに情報を足しても迷いが増えるだけです。
どちらに当てはまるかを見分ける
見分けるための問いは、ひとつで足ります。
「何が分かれば、決められますか」
この問いに具体的に答えられるなら、知見の問題です。「競合がいくらで出しているか分かれば」「この設備の回収期間が分かれば」と言えるなら、足りない情報がはっきりしています。それを取りにいけば、判断は進みます。
答えに詰まる、あるいは「全部分かっているはずなのに」と感じるなら、軸の問題です。情報を足しても解決しない種類の迷いで、何を大事にしたいのかを自分で言葉にするところから始める必要があります。
知見が足りないとき:抱え込まずに、外から入れる
私自身、知見が足りずに決めきれなかった経験があります。
営業部門のマネージャーをしていたとき、新しい商品メニューの構築が急務になりました。やるべきことは明確でした。ところが、その領域の知見が社内に十分になく、どう設計すればよいかが分からない。決めなければいけないのに、決める材料がない状態が続きました。
前に進めたのは、外部のコンサルタントを招いてからです。社内にない知見を外から持ち込んだことで、判断に必要な材料がそろい、ようやく構築に着手できました。
振り返ると、もっと早く外に頼ればよかったと思います。自分たちで何とかしようとしていた期間は、考えていたというより、止まっていたのに近い状態でした。知見が足りないことが原因なら、社内で悩む時間はほとんど前進につながりません。
ここで大事なのは、外に頼ること自体がひとつの決断だという点です。「自分で決められないから人に頼る」のではなく、「知見が足りないと判断したから、それを取りにいく」。そう捉えると、専門家を入れることへの抵抗は小さくなります。
判断の軸が定まらないとき:答えではなく、整理が要る
一方で、情報がそろっているのに決められない場合は、専門家に答えをもらっても解決しません。
このとき起きているのは、たいてい優先順位の衝突です。売上を取りにいきたいが、社員の負担も増やしたくない。新しいことを始めたいが、既存の取引先との関係も崩したくない。どちらも大事で、どちらも正しい。だから決められない。
この状態に効くのは、答えを渡されることではなく、自分が何を一番大事にしたいのかを言葉にすることです。話しているうちに、自分でも気づいていなかった本音や、実は恐れているものが見えてくる。そこまで来れば、決断は自分の中から出てきます。
これはコーチングが担う役割です。コーチは答えを出しません。問いを重ねて、判断の軸を本人の中から引き出します。コーチングとコンサルティングの違いについては、コーチングとコンサルティングの違い|中小企業の社長はどう使い分けるかで詳しく整理しています。
もうひとつ:分かっているのに、動けないとき
決めることはできても、最初の一歩が出ない、という場合もあります。これは社長に限らず、組織の中でもよく起きます。
以前、部下がまさにこの状態にありました。何をすべきかは本人も分かっている。それでも動き出せずにいました。
私がしたのは、一緒に案件の調査から入ることでした。一人で始めさせるのではなく、最初の作業を隣で一緒にやる。正直に言えば、そのときの私は思いに任せて熱く声をかけてしまい、関わり方として理想的だったとは言えません。それでも部下は、必死になって提案まで走り切ってくれました。
この経験から学んだのは、動けない人に必要なのは、正しい指示や励ましよりも、最初の一歩を一人にしないことだということです。一歩目さえ出れば、あとは本人の力で進んでいけます。
社長の場合、この一歩目を一緒に踏み出してくれる人が社内にいないことが多くなります。だからこそ、社外に伴走してくれる相手を持つ意味があります。社長が相談相手を持つべき理由は、社長に相談相手が必要な理由|答えより先に、判断の重さを分けるでも書いています。
まとめ
決められない理由は、知見が足りないか、判断の軸が定まらないかのどちらかです。見分けるには「何が分かれば決められるか」を自分に問うこと。答えられるなら知見を外から入れ、答えられないなら考えを整理する。そして、決めたのに動けないときは、最初の一歩を一人で踏み出さないこと。
自分がどちらに当てはまるか分からない、という段階でも構いません。無料相談では、いまの迷いが知見の問題なのか軸の問題なのか、その切り分けから一緒に行います。判断の軸を整えたい場合はコーチングを、初回1時間無料でお試しいただけます。