通販・EC

通販サイトの立ち上げが失敗する3つの理由と、着手前に確認すべきこと

目次

通販サイトを立ち上げるとき、最初の悩みはたいていカートシステムの選定やサイトのデザインです。どこに頼むか、いくらかかるか、どんな見た目にするか。ここに時間をかける会社は多いと思います。

ただ、立ち上げがうまくいかなかったケースを振り返ると、原因がシステムやデザインだったことはほとんどありません。つまずくのは、もっと手前の3点です。

  1. 売価から逆算した原価設計をしていない
  2. 在庫と販促のタイミングが噛み合っていない
  3. 社内で「誰が決めるか」が決まっていない

いずれも、サイトを公開してから直そうとすると大変な労力がかかります。逆に言えば、着手前に手を打てば避けられる種類の失敗です。

私自身、通販サイトの立ち上げを統括し、構築から販促、原価管理、P/Lまで一通り担当しました。順風満帆ではありませんでした。想定どおりに売れない、原価が合わない、社内の足並みが揃わない。そのときに見落としていたものが、この3点です。

これから立ち上げる方に向けて、順番に説明します。

理由1|売価から逆算した原価設計をしていない

ECの難しさは、売上が伸びても利益が残らないことが起きる点にあります。しかも、それが起きていることに気づくのが遅れます。

売上は毎日見えます。一方で、利益を削っている要素は伝票の裏側に散らばっています。広告費、送料、決済手数料、梱包資材、返品と交換にかかる往復の送料と再検品、在庫の保管費、売れ残りの値下げ。商品を撮影して採寸して原稿を書く手間も、実際にはコストです。

これらを一つひとつ拾って1件あたりに割り戻すと、「粗利は取れているのに営業利益が出ない」という状態の正体が見えてきます。表の売上だけを追いかけていると、裏側でどこが利益を削っているかが見えなくなるのです。

売価は「原価×掛け率」では決まらない

よくあるのは、仕入れ原価に一定の掛け率をかけて売価を決めるやり方です。店頭ではそれで成立していても、通販では成立しないことがあります。店頭にはない費用が、通販には乗るからです。

順番を逆にします。まず、1件あたりにかかる変動費を漏れなく並べます。そこから目標とする利益率を引いて、「1件売るために広告にいくらまでかけられるか」を先に決めます。この上限が、そのまま集客の制約条件になります。

決めた上限で本当に集客できるかは、広告を出す前におおよそ見当がつきます。同じような商品がいくらで競合しているか、検索でどれくらいの単価がついているかを調べれば、無理のある数字かどうかは判断できます。ここで合わなければ、売価を上げるか、商品構成を変えるか、送料の設計を見直すしかありません。

計算が合わないと分かったときに、止められるか

私が統括した立ち上げでは、原価率が市場の水準に比べて明らかに高い状態でした。仕入先は立ち上げ前の段階ですでに決まっており、その仕入先自身が卸も手がけていたため、原価の交渉余地もほとんどありません。損益分岐点の売上高に届かせるのが難しいことは、ローンチ前の時点で分かっていました。

期待をかけたのは物流費です。仕入先から直接発送する形にできれば、物流の変動費を抑えてトータルで帳尻を合わせられるはずでした。ところが、この交渉も期待した水準には至りませんでした。

広告も同じです。WEB広告は媒体やクリエイティブによってCPAに差は出ますが、基本的には、かけた分のリターンが見込める領域です。ただしそれは、予算がついていればの話です。ローンチ時点で確保できていた広告予算では、そもそも上限を伸ばすことができませんでした。

売価も、原価も、物流も、広告も、どれを触っても届かない。その状態のまま、立ち上げに踏み切ったことになります。最終的には、当初toC向けとして設計していたものをtoBにも広げ、法人への営業をかけて販売チャネルそのものを増やす方向に舵を切りました。

ここから学んだことは、はっきりしています。逆算して合わない数字は、後から売上が伸びても合いません。合うようになるのは、構造のどこかが変わったときだけです。

ですので、これから立ち上げる方には、計算が合わないと分かった段階で「止める」「構造から作り直す」という選択肢をテーブルの上に残しておくことをお勧めします。公開日が先に決まっていると、この選択肢は驚くほど簡単に消えます。

1回の注文で見るか、顧客単位で見るか

初回の注文単体では利益が出ない設計も、リピートを前提にすれば成立することがあります。ただしそれは、リピートが実際に起きたときの話です。

初めから「2回目で回収する」と決めるなら、2回目を起こすための仕組み(同梱物、フォローの連絡、定期購入の設計)を同時につくっておく必要があります。仕組みがないまま初回赤字だけを許容すると、赤字だけが積み上がります。

理由2|在庫と販促のタイミングが噛み合っていない

2つ目は、モノの流れと販促の流れが別々のカレンダーで動いてしまうことです。

通販では、この2つがずれると、どちらに転んでも損が出ます。販促が先行して在庫が足りなければ、広告費だけが出ていって注文は取れません。しかも、買えなかったお客様は次に戻ってこない可能性が高い。逆に在庫を先に積んで販促が遅れれば、仕入れに使った現金が倉庫で寝たまま動かなくなり、最後はセールで利益を削って処分することになります。

予測は外れる前提で組む

先に申し上げておくと、欠品と過剰在庫は、立ち上げのときだけ起きるものではありません。運用に乗ってからも、規模の大きなECで繰り返し起き続けます。原因の多くは単純で、需要の予測が外れるからです。

であれば、予測の精度を上げることに時間をかけるより、外れたときの損失を小さくする設計のほうが効きます。たとえば予約注文を先に取って実際の需要を見てから発注量を決める、初回は最小ロットで出して回転の速さを測ってから次を決める、といったやり方です。発注のリードタイム、最小ロット、入荷日、販促の開始日を1枚のカレンダーに並べておけば、「この販促は入荷に間に合わない」という会話が事前に起こります。

「無在庫にすれば安全」とは限らない

在庫リスクを避ける方法として、無在庫という選択肢があります。注文が入るたびに仕入先へ在庫を確認して手配する形です。

私が関わったBtoB向けのノベルティECで、この形を採りました。在庫を持たないので、確かに在庫リスクはありません。ところが、掲載できる商品が思うように揃いませんでした。結果として、ごく少ないSKUで公開することになり、品揃えを期待して訪れたお客様の期待を裏切ることになりました。

在庫リスクを消した代わりに、品揃えというECの最大の武器を失ったわけです。無在庫にするかどうかは、リスクの有無だけでなく、「その方式で、お客様が期待する品揃えを用意できるか」まで確認してから決めてください。

理由3|社内で「誰が決めるか」が決まっていない

3つ目は、数字の話ではなく、社内の話です。そして経験上、いちばん厄介なのがここです。

通販は、たいていの会社で既存のチャネルと利害がぶつかります。店舗や営業が売っている商品を、通販が別の価格で売る。限られた在庫を、どちらに優先して回すか。どれも、現場同士では決着がつかない類の話です。

曖昧な体制は、サイトの出来にそのまま出る

先ほどのノベルティECには、続きがあります。

このサイトは、誰が責任者なのかがはっきりしないまま進みました。指示も曖昧なまま公開日を迎え、出来上がったのは、正直に言って使い勝手の極めて悪いサイトでした。初めて訪れたお客様が、もう一度来てくれることはありません。結局このサイトは、期待した成果を出せないまま終わりました。

振り返って思うのは、止まっていたのは誰かの能力ではなく、決める人が決まっていなかったという一点だということです。判断が必要な場面は立ち上げの過程で何十回も訪れますが、そのたびに誰に聞けばよいか分からない状態だと、一つひとつは小さな妥協で処理されていきます。その小さな妥協の積み重ねが、公開時点のサイトの品質になります。

立ち上げ前にやっておく2つのこと

ひとつは、責任者を明確に決めることです。名前だけでなく、価格・値引き・在庫配分について、その人がどこまで自分で決めてよいのかという範囲まで決めます。社長が最終決裁者であること自体は問題ありません。問題なのは、現場がどこまで決めてよいかが不明確なまま走ることです。

もうひとつは、既存チャネルとの役割分担を、立ち上げ前に合意しておくことです。通販で扱う商品、価格の考え方、既存チャネルと重なる領域の扱い。後から調整しようとすると、たいてい通販側が譲ることになり、伸びる余地を自分で削ることになります。

着手前に確認したい6つのこと

ここまでの内容を、これから立ち上げる方向けのチェックリストにまとめます。サイトの制作に入る前に、この6つに答えられる状態をつくっておくことをお勧めします。

第一に、1件あたりにかかる変動費を、送料・決済手数料・梱包・返品まで含めて書き出せているか。第二に、目標利益率から逆算して、1件の獲得にかけてよい広告費の上限が決まっていて、その予算が実際に確保できているか。第三に、逆算した数字が合わなかったときに、公開を延期する、あるいは構造から作り直すという判断ができる状態か。第四に、初回発注のロットと入荷日、販促の開始日が同じ1枚のカレンダーに乗っているか。第五に、在庫を持つか持たないかを、リスクだけでなく品揃えの観点からも検討したか。第六に、責任者と、その人が自分で決めてよい範囲が明文化されているか。

全部に「はい」と答えられる状態で始められる会社は多くありません。ただ、どれが空欄なのかを自覚して始めるのと、気づかずに始めるのとでは、その後の修正コストがまったく違います。

まとめ

通販サイトの立ち上げでつまずくのは、技術の問題ではなく、原価設計・在庫と販促のタイミング・社内の意思決定という3点です。いずれも、着手前であれば紙の上で解ける問題です。

私自身、この3つで苦労しました。数字が合わないと分かっていながら走ったこと、在庫リスクを避けた結果として品揃えを失ったこと、決める人が決まらないまま公開したこと。どれも、当時は仕方がないと思っていましたが、いま振り返れば手を打てた場所がありました。

成功事例をなぞるより、失敗の手前で止められる話のほうが役に立つと思っています。自社の場合はどこが空欄なのか、一度整理してみてください。整理してみて判断に迷う部分があれば、通販・EC事業の立て直しのご支援としてご相談を承っています。ご相談は無料です。「何が課題なのかも分からない」という段階でも構いません。

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